イタリアンホットハッチの代名詞、アバルト595。
そのコンパクトなボディに秘められた180馬力のパワーと、耳に残る勇ましい排気音は、多くのカーマニアを魅了してきました。
しかし、購入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔する人が少なくないのも事実です。
2024年5月に日本向けモデルの生産が終了したアバルト595。
今後は中古車市場での入手が主流となりますが、購入前に知っておくべき現実的な問題点があります。
この記事では、実際のオーナーの声や整備データを基に、アバルト595で後悔しやすい8つの理由と、それでも愛される魅力、そして後悔しない選び方まで徹底解説します。
アバルト595を買って後悔する人の共通点とは
アバルト595の購入を後悔する人には、いくつかの共通する特徴があります。
最も多いのは、「見た目のコンパクトさと可愛らしさ」に惹かれて、実用性や維持費を深く考えずに購入してしまうケースです。
車男爵
また、メインカーとして使おうとする人も後悔しやすい傾向があります。
日常の買い物や家族での移動を考えると、3ドアで後席が狭く、荷物もほとんど積めないアバルト595は実用性に欠けます。
さらに、維持費を軽視する人も危険です。
「排気量1.4Lだから維持費も安いはず」と考えがちですが、実際にはハイオク指定、高額な消耗品、そして避けられない故障修理費により、年間維持費は70万円を超えることも珍しくありません。
最後に、イタリア車の特性を理解していない人も後悔しやすいです。
日本車のような信頼性を期待すると、頻繁な小トラブルや電気系統の不具合にストレスを感じることになります。
アバルト595で後悔する8つの理由
購入前に知っておくべき現実的な問題点を詳しく解説します。これらの問題を理解した上で購入すれば、後悔する可能性を大幅に減らせます。
- 【理由1】燃費の悪さでガソリン代が月2万円以上
- 【理由2】消耗品が国産車の2倍以上
- 【理由3】避けられない故障と高額修理費
- 【理由4】硬すぎる乗り心地で体がボロボロ
- 【理由5】狭すぎる室内で実用性ゼロ
- 【理由6】意外と効かない小回りで運転が大変
- 【理由7】爆音マフラーで近所迷惑の常習犯
- 【理由8】新車価格が3年で半額になる恐怖
以下より、詳しく解説します。
【理由1】燃費の悪さでガソリン代が月2万円以上
アバルト595の実燃費は、オーナーの報告によると街乗りで8~11km/L程度です。
高速道路でも12~15km/L程度にとどまり、カタログ値とは大きな差があります。
車男爵
さらに、ハイオクガソリン指定のため、レギュラーと比較すると1リットルあたり10円以上の差額が発生します。
年間1万km走行する場合、ハイオク価格を191円/Lで計算すると、年間のガソリン代は約19万円、月換算で約1.6万円となります。
スポーツ走行を楽しむと燃費はさらに悪化し、月2万円を超えるガソリン代は家計に大きな負担となります。
【理由2】消耗品が国産車の2倍以上
アバルト595の消耗品は、スポーツ走行を前提とした設計のため、価格も交換頻度も国産車を大きく上回ります。
- エンジンオイル交換 ⇒ 純正オイル使用で約1万円(3,000~5,000km毎)
- タイヤ交換 ⇒ 17インチハイグリップタイヤで1セット10~15万円
- ブレーキパッド交換 ⇒ 4輪で約3万円(ダストが多く交換頻度高い)
- MTAオイル交換 ⇒ 約2.7万円(8,000km毎推奨)
特にブレーキダストが多く、ホイールがすぐに汚れることでも知られています。
低ダストパッドに交換するオーナーも多いですが、それでも国産車と比較すると消耗は早いです。
年間のメンテナンス費用は、定期的なオイル交換やフィルター類で5~10万円は見込んでおく必要があります。
【理由3】避けられない故障と高額修理費
イタリア車の宿命である故障は必ず起きると覚悟が必要です。以下の故障が頻発します。
- AT(セミAT)の構造的欠陥
- 経年劣化による高額部品の交換
- イタリア車特有の電気系統トラブル
以下より、各故障について詳しく見ていきます。
AT(セミAT)の構造的欠陥
アバルト595のMTA(デュアロジック)は、油圧機構の故障が避けられない構造的な弱点を持っています。
車男爵
多くの整備工場では、主原因の部品交換で4万円程度に抑えられる場合もありますが、それでも国産車では考えられない高額修理です。
経年劣化による高額部品の交換
3年目以降は高額部品の交換リスクが急増します。
- ラジエーター交換 ⇒ 約20万円
- エアコンコンプレッサー交換 ⇒ 約15万円
- オルタネーター交換 ⇒ 約10万円
- 冷却水タンクの割れ ⇒ 約5万円
実際のオーナーからは、「4年目の維持費は100万円を超えた」という報告もあります。
イタリア車特有の電気系統トラブル
ブースト計のビビリ、ワイパー故障、各種センサーの誤作動は定番のトラブルです。
一つ一つは小さな故障でも、頻繁に発生するとストレスが蓄積します。
車男爵
【理由4】硬すぎる乗り心地で体がボロボロ
特にコンペティツィオーネの乗り心地は「拷問レベル」と表現するオーナーもいるほどです。
サーキット走行を前提とした硬い足回りは、日本の一般道では過剰すぎます。
- 1時間の運転で腰痛を訴える人多数
- 同乗者から「二度と乗りたくない」と言われることも
- 段差を超えるたびに衝撃が直接伝わる
- 長距離ドライブは修行のような苦痛
ベースグレードやツーリズモは比較的マイルドですが、それでも国産コンパクトカーと比較すると明らかに硬い設定です。
【理由5】狭すぎる室内で実用性ゼロ
アバルト595の実用性の低さは、想像以上です。
- 後席は身長170cm以下限定(それでも窮屈)
- 荷物スペースは軽自動車以下(185L)
- 3ドアで後席への乗り降りが困難
- 買い物袋すら積むのに苦労する
「外から見ると後席に大人が乗るのは難しいように見えますが、実際には結構ちゃんと乗れます」という意見もありますが、それは「170センチくらいまでの方であれば」という条件付きです。
日常の買い物や家族での移動を考えると、メインカーとしては明らかに不向きです。
【理由6】意外と効かない小回りで運転が大変
コンパクトカーなら小回りが利くと思いがちですが、アバルト595の最小回転半径は5.4mです。
車男爵
狭い道でのUターンや、機械式駐車場での取り回しに苦労するという声が多数あります。
特に都市部での使用を考えている人は、この点を十分に考慮する必要があります。
【理由7】爆音マフラーで近所迷惑の常習犯
アバルト595の魅力の一つである排気音は、同時に大きな問題にもなります。
特にレコードモンツァ装着車は、朝6時の始動で300m先まで響くほどの爆音です。
- マンション住まいなら間違いなく苦情が来る
- 住宅街では早朝・深夜の使用に気を遣う
- 「アバルト うるさい」で検索される始末
- 純正マフラーでも他車と比較すると大音量
「レコードモンツァがうるさくて」という理由で、ジェントルなマフラーに交換するオーナーも増えています。
【理由8】新車価格が3年で半額になる恐怖
アバルト595のリセールバリューは、購入価格によっては3年で半額近くまで下落する可能性があります。
- 新車価格422万円のF595 ⇒ 3年後は200万円台
- コンペティツィオーネは比較的高いリセール(最高80%)
- 2024年5月生産終了で今後の価値下落は不透明
- 一般的な輸入車と同様の価値下落傾向
ただし、MT車やワンオーナー車、整備記録完備の個体は比較的高値を維持する傾向があります。
それでもアバルト595が愛される理由
これだけの欠点があるにもかかわらず、アバルト595には熱狂的なファンが存在します。その理由を探ってみましょう。
- 軽量ボディに180馬力が生む唯一無二の刺激
- 心を揺さぶるエンジンサウンドと加速感
- 見るたびに好きになるアイコニックなデザイン
- 自分だけの1台に育てるカスタマイズの沼
- 全国150台が集まるオフ会の熱狂的コミュニティ
以下より、詳しく解説します。
軽量ボディに180馬力が生む唯一無二の刺激
アバルト595の魅力は、約1トンの軽量ボディに最高出力180馬力(コンペティツィオーネ)を詰め込んだパッケージにあります。
電子制御に頼らない素の走りは、現代のスポーツカーでは味わえない純粋な楽しさを提供します。
車男爵
「持ち前の車体の軽さと音、そしてシフトフィーリングでとっても快適な加速感を提供してくれます」というオーナーの声が、この車の本質を表しています。
心を揺さぶるエンジンサウンドと加速感
レコードモンツァが奏でる勇ましい排気音は、他の車では決して味わえない強烈な個性です。
「エンジンに火が入った瞬間、テールエンドの太鼓の中で排気の脈動が踊り始めた」という表現が、この車の特別さを物語ります。
ドッカンターボ的な加速フィールも含めて、五感で楽しめるスポーツカーです。
見るたびに好きになるアイコニックなデザイン
可愛さと獰猛さが同居する唯一無二のデザインは、所有する喜びを満たしてくれます。
- フィアット500の愛らしさにスポーティさをプラス
- サソリのエンブレムが主張する特別感
- 駐車している姿を眺めるだけでも満足感
- 街中で注目を集める存在感
インタークーラー冷却用のインテークが備わったフロントバンパーなど、機能美も兼ね備えたデザインです。
自分だけの1台に育てるカスタマイズの沼
アバルト595は、豊富なアフターパーツで自分好みに育てていく楽しみがあります。
サスペンション、マフラー、エアロパーツなど、欠点を改善しながら理想の車に仕上げていく過程で愛着が深まります。
車男爵
全国150台が集まるオフ会の熱狂的コミュニティ
アバルトオーナー同士の強い絆と情報交換の文化は、他の車種では味わえない財産です。
全国規模のオフ会では150台以上が集まることもあり、トラブル対処法や整備情報の共有、パーツの融通など、助け合いの精神が根付いています。
この濃密なコミュニティの存在が、数々の欠点を乗り越える原動力となっています。
アバルト595に向いている人・向いていない人
自分のライフスタイルに合うか冷静に判断することが重要です。アバルト595は万人向けの車ではありません。
- 向いている人の特徴
- 向いていない人の特徴
以下より、詳しく解説します。
向いている人の特徴
アバルト595を心から楽しめる人には、以下のような特徴があります。
- セカンドカーとして所有できる環境がある
- 独身または理解ある家族がいる
- 年収600万円以上で維持費に余裕がある
- 趣味車として割り切れる
- 週末ドライブ中心の使い方
- イタリア車の個性を楽しめる
- DIYメンテナンスができる、または信頼できる整備工場がある
特に重要なのは、「欠点も含めて愛せる」という心の余裕です。
向いていない人の特徴
一方で、以下のような人には向いていません。
- メインカーとして使いたい
- 子育て世代で実用性重視
- 維持費を気にする
- 長距離通勤で使用する
- 完璧な信頼性を求める
- 静かな車を好む
- 腰痛持ちなど体に不安がある
「コンパクトカーだから維持しやすい」という先入観は捨てる必要があります。
後悔しないグレードとトランスミッションの選び方
グレードとトランスミッション選びが満足度を大きく左右します。適切な選択で、後悔のリスクを最小限に抑えられます。
- グレード別の特徴と選び方
- MT vs AT 絶対に選ぶべきトランスミッション
以下より、詳しく解説します。
グレード別の特徴と選び方
アバルト595には複数のグレードが存在し、それぞれ特徴が異なります。
| グレード | 出力 | 特徴 | おすすめ度 |
| F595(ベース) | 165馬力 | 最も手頃な価格、乗り心地も比較的マイルド | 初心者◎ |
| ツーリズモ | 165馬力 | 革シート装備、快適装備充実、音も控えめ | 快適性重視○ |
| コンペティツィオーネ | 180馬力 | 最高出力、硬い足回り、レコードモンツァ標準 | 走り重視◎ |
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MT vs AT 絶対に選ぶべきトランスミッション
トランスミッション選びは、アバルト595の満足度を大きく左右する最重要ポイントです。
- 左ハンドルMTが最良の選択
- 右ハンドルMTが次点
- AT(MTA/デュアロジック)は絶対NG
MTAの故障リスクと維持費を考えると、MT一択です。
「MTが運転できない」という理由でATを選ぶと、高額な修理費で必ず後悔します。
車男爵
アバルト595中古車購入で失敗しない5つのポイント
中古車選びを間違えると後悔の上塗りになります。以下のポイントを押さえて、良質な個体を見つけましょう。
- 狙うべき年式とグレード
- 必ず確認すべき整備記録
- 車両の状態は要チェック
- 避けるべき地雷車両の見分け方
- 信頼できる店の選び方
以下より、詳しく解説します。
狙うべき年式とグレード
中古車選びの基本は、2016年以降の後期型を狙うことです。
- 2017年2月以降の後期型が理想
- 走行距離3万km以下
- ワンオーナー車
- 整備記録簿完備
前期型は総額100万円台で購入可能ですが、後期型との装備差や信頼性の違いを考慮すると、少し予算を増やしてでも後期型を選ぶべきです。
必ず確認すべき整備記録
整備記録の確認は、中古車選びで最も重要なポイントです。
- MTAオイル交換履歴 ⇒ 8,000km毎
- エンジンオイル交換履歴 ⇒ 3,000~5,000km毎
- 冷却水交換履歴 ⇒ 2年毎
- ブレーキフルード交換履歴
- 定期点検の実施状況
整備記録が不明確な車両は、どんなに安くても避けるべきです。
車両の状態は要チェック
アバルト特有のウィークポイントを重点的に確認することが重要です。
- MTAの変速スムーズさ(AT車の場合)
- エアコンの効き具合
- 異音の有無(エンジン、足回り、内装)
- 電装品の動作確認(メーター、パワーウィンドウ等)
- 冷却水タンクの割れや樹脂パーツの劣化
- タイヤの残り溝と製造年
特に「MTAの変速」と「エアコンの効き」は必ず確認してください。
避けるべき地雷車両の見分け方
以下のような車両は、後々大きなトラブルの元になります。
- 事故歴あり(修復歴車)
- 改造車を純正に戻した形跡がある
- 走行距離が異常に少ない(改ざんの可能性)
- 個人売買(保証なし)
- 相場より極端に安い
- 試乗を断られる
車男爵
信頼できる店の選び方
アバルト595の中古車は、購入店選びが非常に重要です。
- 正規ディーラー認定中古車 ⇒ 最も安心だが価格は高め
- アバルト専門店 ⇒ 知識豊富で整備も安心
- 輸入車専門店 ⇒ 実績のある店なら選択肢に
一般の中古車販売店は、整備知識や部品調達ルートの問題から避けた方が無難です。
アバルト595の年間維持費シミュレーション
最低でも年間70万円は覚悟が必要です。具体的な内訳を見ていきましょう。
- 固定費の内訳
- メンテナンス・修理費の目安
- 維持費を抑える現実的な方法
以下より、詳しく解説します。
固定費の内訳
年間の固定費だけでも、以下のような金額が必要です。
| 項目 | 年間費用 | 備考 |
| 自動車税 | 34,500円 | 1.4L排気量 |
| 任意保険 | 80,000~150,000円 | 年齢・等級による |
| 車検積立 | 50,000円 | 2年で10万円として |
| 駐車場代 | 120,000円 | 月1万円として |
| ガソリン代 | 190,000円 | 年間1万km走行 |
固定費だけで年間約47万円~59万円が必要です。
メンテナンス・修理費の目安
定期メンテナンスと修理費用の目安は以下の通りです。
- 定期メンテナンス ⇒ 50,000~100,000円
- タイヤ交換積立 ⇒ 30,000円(3年で1セット)
- 緊急修理費用 ⇒ 200,000~300,000円は常備
「4年目の維持費は100万円を超えた」という報告もあるように、経年劣化による高額修理は避けられません。
維持費を抑える現実的な方法
高額な維持費を少しでも抑えるための方法をご紹介します。
- DIYメンテナンスを覚える(オイル交換など)
- 信頼できる整備工場を見つける(ディーラーの半額程度)
- 部品の並行輸入を活用する
- 予防整備を徹底する(故障前の交換)
- オーナーコミュニティで情報収集
- イージーケアなどのメンテナンスプログラムを活用
車男爵
まとめ
アバルト595は、決して万人向けの車ではありません。
高額な維持費、頻繁な故障、硬い乗り心地、実用性の低さなど、購入を後悔する要因は確かに存在します。
しかし、これらの欠点を理解し、受け入れる覚悟がある人にとっては、人生最高の相棒になる可能性を秘めた特別な車でもあります。
重要なのは、以下の点を冷静に判断することです。
- 経済的余裕 ⇒ 年間70万円以上の維持費を問題なく払えるか
- 使用環境 ⇒ セカンドカーとして、または趣味車として使えるか
- 価値観 ⇒ 実用性より走る楽しさを優先できるか
- 覚悟 ⇒ イタリア車の個性(故障含む)を楽しめるか
もしこれらすべてに「YES」と答えられるなら、アバルト595はあなたに忘れられない体験を提供してくれるでしょう。
欠点も含めて愛せる人だけが、この小さなスコーピオンの本当の魅力を知ることができるのです。
車男爵


