車のタイヤがパンクしているのを発見したら、驚きと怒りを感じることでしょう。
特に、それが第三者による悪質なイタズラ(故意のパンク)だった場合、単なる整備上のトラブルではなく「犯罪被害」として対応しなければなりません。
この記事では、タイヤパンクのイタズラ被害に遭ったときの警察への相談方法と法的手続き、犯人を特定するためのポイント、犯人逮捕後の流れ/strong>を解説します。
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タイヤのパンクがイタズラだった場合の警察への相談と被害届提出の方法
タイヤパンクがイタズラによるものだと疑われる場合は、できるだけ早く警察に相談することが重要です。
被害届を提出しておくことで、保険請求の際の証明書類にもなりますし、類似被害の防止にもつながります。
ここでは、警察対応の基本的な流れと注意点を解説します。
- 警察への通報と保険会社への連絡
- 器物損壊罪による刑事手続き
- 警察の捜査範囲と現実
それでは、警察対応の具体的な流れとポイントを見ていきましょう。
警察への通報と保険会社への連絡
警察への通報と同時に保険会社への連絡もするようにしましょう。
警察への通報
被害に気付いたら、できるだけ早く警察に通報します。
道路上で車が動けない場合など緊急性が高いときは迷わず110番通報し、場所と状況を伝えて来てもらいましょう。緊急でない場合や後から気付いたケースでも、管轄の警察署や交番に連絡すれば対応してもらえます。
「タイヤを誰かにパンクさせられたようだ」という旨を伝え、現場に警察官に来てもらえるなら来てもらい、難しければ後日でも訪問して被害の申告を行います。
警察官が来たら、先に記録しておいた状況(写真やメモの内容)を見せつつ、発見の経緯を冷静に説明します。
警察官は現場の状況を確認し、被害の程度を把握した上で「被害届」を出すよう求めてくるのが一般的です。
被害届とは簡単に言えば「何月何日何時頃に、どこで、どのような被害に遭ったか」という事実を警察に申告する書面手続きのことです。
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保険会社への連絡
初動対応として警察に通報・被害届提出を行った後は、自動車保険会社への連絡も忘れずに行いましょう。
加入している任意保険のプランによっては、今回のようないたずらによる車両の損害が補償対象となる場合があります。
保険金請求をスムーズに進めるため、警察への届出が完了した段階で保険会社にも被害の事実を連絡しておくと良いでしょう。
なお、保険会社に連絡する際には被害届の受理番号や警察署名などを尋ねられることがあるため、警察手続き時に確認しておくと安心です。
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また、仮に保険金の支払い対象になったとしても、保険を利用すると翌年以降の等級が1つ下がり保険料が上がってしまいます。
修理代(タイヤ交換代等)が自己負担でも大きくない場合は、あえて保険を使わず自費修理した方が結果的に得になることもあります。
保険を利用すべきか迷う場合は、まず保険会社に相談し、等級ダウンによる保険料アップ額と修理費用を比較検討するとよいでしょう。
参考
落書・いたずらの被害は自動車保険で補償されるか自動車保険の三井ダイレクト損保
器物損壊罪による刑事手続き
タイヤを故意にパンクさせる行為は、刑法上「器物損壊罪」という犯罪に該当します。
器物損壊罪とは、「他人の所有物を壊す、または使えなくする」ことによって成立する犯罪であり、他人の車のタイヤを意図的にパンクさせる行為はこれにあたります。
刑法第261条に定められた法定刑は「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」(もしくは科料)で、決して軽くはない刑事罰が科されうる行為です。
もっとも、器物損壊罪は刑事上の扱いとして親告罪に分類されています。親告罪とは、被害者からの告訴(加害者を処罰してほしいという正式な意思表示)がなければ起訴できない犯罪のことです。
したがって、タイヤパンク犯人に対して刑事処罰を求めたい場合、警察に被害届を出すだけでなく、後述するように「告訴状」を提出する手続きが必要となります。
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一方で告訴状の提出(告訴)を警察が受理すれば、警察は捜査を進める法的義務を負います。
告訴は被害者にとって「犯人を処罰してほしい」という強い意思表示となり、捜査当局も本格的に動かざるを得なくなります。
しかし告訴状は被害届に比べて警察も慎重に扱うため、受理してもらうハードルが高いのが実情です。
どうしても犯人を捕まえて罰してほしいという場合には、弁護士に相談して告訴状を作成し提出する方法も検討するとよいでしょう。
なお、犯人がまだ分からない段階でも「被告訴人不明」として告訴状を提出することは可能です。
参考
器物損壊とは?器物損壊罪になる条件、示談のポイント【弁護士解説】刑事事件の相談はデイライト法律事務所
警察の捜査範囲と現実
被害届を提出した後、警察がどこまで捜査してくれるか期待と現実にはギャップがあります。現実を知ることで、対策の方向性を見誤らないようにしましょう。
- 重要度の低さ ⇒ 車のタイヤパンク程度の被害は警察内部では優先度が低い
- 捜査の範囲 ⇒ 基本的には周辺防犯カメラの確認程度にとどまる
- 鑑識の出動なし ⇒ 指紋採取などの本格的な現場検証はまず行われない
- 検挙率の低さ ⇒ 車へのイタズラ犯の検挙率は非常に低い現状がある
被害届と告訴状の違いも重要なポイントです。被害届はあくまで「事件があった」という報告であり、警察に捜査義務を発生させる効果はありません。一方、告訴状が受理されれば警察は捜査を進める法的義務を負います。
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仮に告訴状を受理してもらえたとしても、決定的な証拠がなければ犯人特定は依然として難しいでしょう。警察のリソースには限りがあり、残念ながら犯人不明のまま泣き寝入りとなるケースが少なくありません。
警察の捜査に過度な期待を寄せず、自分でもできる範囲で犯人特定の努力や再発防止策を講じることが大切です。
犯人特定のためには自らも動く必要があるでしょう。
次章では、犯人を特定するために被害者側でできる具体的な対策について見ていきましょう。
参考
車のイタズラ(落書き・タイヤパンク)の罪|犯人特定可?警察など有効な対策交通事故弁護士相談Cafe
参考
車のイタズラ(落書き・タイヤパンク)の罪|犯人特定可?警察など有効な対策T.L探偵事務所
犯人を特定するためにできること
残念ながらタイヤパンク程度の器物損壊では、警察だけに任せていては犯人が見つからない可能性も高いです。
被害者側が積極的に動くことで犯人特定の可能性が高まります。以下では、被害者ができる具体的な対策を紹介します。
- 防犯カメラや目撃情報の活用して調査する
- 心当たりのある人物を考える
- 継続的に証拠収集をする
それでは、これらのポイントについて順に掘り下げていきます。
防犯カメラや目撃情報を活用して調査する
まずは、周辺の防犯カメラや目撃情報、そして物的な証拠を集めるようにしましょう。
防犯カメラ
犯行現場やその周辺の防犯カメラ映像は、犯人特定の強力な証拠になります。以下の手順で確認しましょう。
目撃情報
また、目撃証言の収集も有効な手段です。犯行推定時刻に車の近くで不審な人物を見た人はいないか、近隣の人に聞き込みをしてみましょう。
マンションの管理人や近所の住民が何かしら気付いているケースもあります。実際、「駐車中の被害では近隣住民の目撃情報が決め手になった」という事例もあります。
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物的証拠
- タイヤに刺さっていた釘やネジ ⇒ 重要な証拠品として保管
- 周囲に落ちていた不審な物 ⇒ ビニール手袋などで触れて袋に入れて保存
- 現場の状況写真 ⇒ 発見時の状態を様々な角度から撮影
防犯カメラ映像や目撃情報と併せて、物的証拠も犯人特定の助けとなります。
心当たりのある人物を考える
タイヤパンクなどの車へのイタズラは、無差別な悪戯の場合もありますが、特定の相手を標的にした嫌がらせである可能性も考慮すべきです。
- 最近トラブルになった人物はいないか
- 近隣との駐車場トラブルがなかったか
- 交際相手や知人との間に問題がなかったか
- 匿名での嫌がらせを受けたことがないか
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心当たりのある人物がいる場合の望ましい対応は、まず警察に「○○さんという人物と最近トラブルがあり、気になっている」程度に情報提供することです。警察が任意でその人物に話を聞いてくれる可能性もあります。
顔見知りの相手には、被害に遭った事実をさりげなく伝えて「警察に被害届を出して捜査中だ」と知らせることも有効です。
この情報が犯人の耳に入れば心理的プレッシャーになり、犯行を思いとどまらせる効果が期待できます。
ただし、この方法も警察に相談してから行うべきでしょう。
継続的に証拠収集をする
一度の調査で犯人が特定できない場合も、証拠収集を諦めないことが大切です。特に同じ車が繰り返し狙われるケースでは、次の対策を検討しましょう。
- 駐車監視機能付きドライブレコーダー ⇒ 駐車中の車周辺の動きを記録
- ネットワークカメラ ⇒ スマホに通知機能あり、リアルタイムで異常を検知
- 動体検知センサー ⇒ 人が近づくと自動録画開始する機能が有効
繰り返し被害に遭う場合は、犯行が予想される時間帯(深夜や早朝など)に車を見張る方法も考えられます。ただし、個人での張り込みは危険を伴うため、複数人で行うか警察への相談を優先してください。
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最後に、被害が発生するたびに詳細な記録を残すことも重要です。
これらの記録は後々の警察への追加情報提供や、犯人が見つかった際の損害賠償請求の際に役立ちます。
犯人が判明・逮捕された後の対応
幸いにも証拠が揃って犯人が特定され、警察により逮捕(もしくは書類送検)された場合、事態は次のステージに進みます。
ここからは加害者に対する刑事手続きの流れと、被害者として求められる対応、そして損害賠償や再発防止策について解説します。
- 刑事処罰の流れ
- 被害弁償と民事での賠償請求
- 再発防止とアフターケア
ここからは、犯人特定後の手続きと対応について詳しく見ていきましょう。
刑事処罰の流れ
タイヤパンク犯人が特定された後の刑事手続きの流れは以下の通りです。
- 法定刑 ⇒ 3年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 親告罪の性質 ⇒ 被害者の告訴がなければ起訴されない
- 示談の影響 ⇒ 示談成立で告訴取下げなら刑事処分を免れる可能性大
初犯で被害額も大きくないタイヤパンクの場合、実際には罰金刑や執行猶予付きの懲役刑となることが一般的です。犯人に前科がなく反省・賠償が十分なら、略式手続による罰金で済む場合も多いでしょう。
重要なのは、被害者であるあなたの意思表示です。器物損壊罪は親告罪のため、あなたが告訴の意思(加害者を処罰してほしい意思)を示していないと起訴は困難です。被害届だけで犯人が逮捕された場合でも、最終的には告訴状の提出を求められることがあります。
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いずれにしても、警察や検察からの連絡を待ち、求められた対応(調書への署名押印や示談の意思確認など)をその都度行っていくことになります。
被害弁償と民事での賠償請求
犯人が特定されたら、次は被害の弁償について検討します。刑事事件とは別に、加害者には「不法行為による損害賠償義務」が発生します。
- タイヤの修理・交換費用
- レッカー移動費用
- 代車費用(必要な場合)
- 精神的苦痛に対する慰謝料(限定的)
多くの場合、加害者側も自身の刑事処分を軽くしたい思惑から、示談による自主的な賠償に応じるでしょう。示談とは加害者と被害者の間で紛争解決について合意することで、通常は「謝罪と必要な賠償金の支払い」を条件に被害者が告訴を取り下げるという形をとります。
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もし示談が成立しない場合は、民事訴訟を提起して損害賠償を求めることも可能です。ただし、訴訟には時間と労力がかかることを考慮して判断しましょう。
犯人が見つからなかった場合は、自動車保険(車両保険)の活用を検討してください。
一般的な車両保険ではタイヤ単独の損害は補償対象外のケースが多いですが、契約内容によっては対応可能な場合もあります。
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イタズラ被害の再発防止策
犯人が捕まった場合でも捕まらなかった場合でも、一度被害に遭った後は再発防止策を講じることが重要です。
効果的な防犯対策には以下のようなものがあります。
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また、心のケアも忘れないでください。一度愛車を傷付けられると、「またやられるのでは」という不安を抱えがちです。
防犯対策を講じて安全性を高めることは、精神的な安心にもつながります。
家族や友人に話を聞いてもらうことも大切です。時間とともにショックは和らぎますが、無理に忘れようとせず自分のペースで立ち直りましょう。
タイヤパンクがイタズラ被害か確認する方法
タイヤパンクの原因が自然発生的なものか、意図的な悪戯なのかを判断することは重要です。
以下のポイントを参考に、イタズラの可能性を見極めましょう。
- 側面の損傷 ⇒ タイヤのサイドウォール(側面)に穴がある
- 複数タイヤの被害 ⇒ 同時に複数のタイヤがパンクしている
- 異物の位置が不自然 ⇒ 釘やネジが側面や斜めに刺さっている
- 駐車中の被害 ⇒ 走行中でなく駐車中に発生している
一方、自然に発生するパンクの典型例は、道路上の釘やネジ、ガラス片などをタイヤのトレッド面(接地面)で踏んでしまうケースです。この場合、通常は1本のタイヤのみが被害に遭います。
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いずれにせよ、原因が明らかでない段階では断定を避け、イタズラの可能性も念頭に置いて対応することが重要です。
早めに警察へ相談すれば、専門家の目でパンク原因を判断してもらえますし、仮にイタズラでなかった場合でも適切な対応策を教えてもらえるでしょう。
まとめ
車のタイヤをパンクさせられる悪質ないたずら被害に遭った場合の対応について、発見直後の初動から警察対応、法的手続き、犯人特定のポイント、そしてその後の処置まで一通り解説しました。
- 被害に気付いた際はまず安全を確保し、証拠を記録することが肝心です。
- 状況からイタズラの可能性が高ければ速やかに警察へ通報し、被害届を提出しましょう。
- ただし警察任せにせず、防犯カメラ映像の確認や目撃情報の収集など自分でもできる範囲で犯人特定に努めることが大切です。
- 犯人が判明した際には、刑事処罰の手続きを踏みつつ、必要に応じて告訴状を提出して厳正な対処を求めます。
- 同時に損害賠償交渉(示談)を進め、タイヤ修理代等の弁償を受けるようにします。
- 残念ながら犯人が捕まらない場合でも、記録を残しつつ保険対応や今後の防犯策を講じることが重要です。
いたずらによるタイヤパンク被害は経済的損失だけでなく精神的な不安も招く厄介な出来事です。
しかし、適切な対応策を知っておけば被害を最小限に食い止め、また犯人を法の下に裁く道筋をつけることができます。
万が一同様の被害に遭った際には、本記事の内容を思い出し、落ち着いて行動する助けとしていただければ幸いです。
車両への悪質ないたずらに屈せず、適切な手続きと防犯対策によって安全・安心なカーライフを取り戻しましょう。

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